住宅の一生のエネルギーは53000eu。145年分の食料と同じです。
住宅にもエネルギーがかかります。ここでは住宅のライフサイクル・エネルギー、つまり建設から保守、解体までに必要なエネルギーを見てみましょう。延床面積100平米の木造一戸建て住宅を建てて30年間住むとします。まず、家を建てるには木材やコンクリートなど様々な部材を使いますが、その生産に大量のエネルギーが使われています。次にこれらを集めて大工さんが建築し、建ってからも30年の間どこかが痛んだといっては補修し、そしてついに解体。この全行程に必要なエネルギーの総量は、1.06億kcal、およそ5.3万euです。145年分の一人当たりの食料エネルギーと同じです。1日当たりに直すと4.85eu、4人家族ならひとり1euとちょっと。食事と同じくらいのエネルギーを住宅にも費している、といえば分かりやすいかもしれません。
消費エネルギーの内訳を見ると、部材製造と施工が合わせて約76%。つまり4分の3は建てるときに消費してしまいます。したがって、30年といわず少しでも長持ちさせるほど大きな省エネにつながります。これらの試算は建物だけの話で、家具・調度品や台所用品、家電・情報機器、電気、ガス、灯油などは含まれません。こうした家庭生活に費やされるすべてを含めたライフサイクルエネルギーの中で住宅にかかるエネルギーは、全体の8%程度です。
ところで、試算にもうひとつ含まれていないのが解体したあとに出る建築廃棄物の処理・廃棄にかかるエネルギーです。木造住宅1軒を解体して出る廃棄物の量は、家庭から出るごみ60年分にも相当します。また、三橋規宏氏(日経新聞)は著書の中で、100年かけて育った木材で200年保つ木造住宅を建てることが二酸化炭素を固定し、ひいては地球温暖化防止につながると述べています。このように様々な効用から、住宅は長持ちさせるのが一番なのです。
戦後の焼け跡からスタートした日本の都市の住宅環境は、「ウサギ小屋」といわれるように劣悪でした。豊かな社会の実現には今後もその改善が必要です。地球環境のために住宅改善を我慢するというのではなく、ただその引き替えに、私たちはいままでのような「建てては壊す」文化から脱することが求められているのではないでしょうか。
(資料)
住宅の消費エネルギー試算:科学技術庁資源調査会編『家庭生活におけるエネルギー有効利用』(大蔵省印刷局)による。
参考までに同じ資料でマンション(鉄骨鉄筋コンクリート造り集合住宅)を考えると、ひとまわり狭い延床面積85平米の部屋に60年間住む場合で、一戸建てと比べて7割も多くエネルギーを消費する。現実に60年住めるか考えると、数字はこれよりもっと悪くなりそうだ。丸ビルでさえ74年、隣の新丸ビルは47年で建て替え。旧都庁に至っては30年余りで解体されてしまった。建築廃棄物は家庭ごみ60年分:建築時の投入資源量76トンを家庭ごみ年間排出量1.25トンで割ると60.8年分。